都知事選が終わった。多くの人と同じように、枡添当選の報にがっかりした。
でも、宇都宮さんの事務所や支持者たちが明るいのは救いだ。投票率が46,14 と、昨年の62,60を20%も下回り、昨年の得票の一部が細川候補に流れるなかで、得票数を伸ばしたのだから、健闘したと言えると思う。新しい票を掘り起こすのに成功したのだ。もっと選挙期間が長かったら、もっと公開討論会があったら、結果はもっと伸びていたかもしれない。
脱原発運動の人たちの多くが細川氏を支持して去ってしまったのは残念な事件だったけれど、怪我の功名か、なんとなく選対が若返ったみたいで、ポスターなどもはっとするようなセンスの良いものが出てきたし、ネットの使い方も上手だった。「東京デモクラシー始動」というスローガンに共感する。この選挙で宇都宮さんの周りに新しい民主主義の運動が育っているのだ思うと希望がわく。
細川氏と小泉氏が脱原発を唱えて参戦したのも、画期的なことだったと思う。多くの人が言うように、市民運動や左翼でない、保守系の政治家たちが大々的に語ることで、脱原発を口にすることが、一般的なこととして公認されるようになったのはとても良いことだった。細川さんは当選はできなかったけれど、こちらも選挙運動を通じて、今後に影響する流れができたのであれば素晴らしいと思う。政界再編があることを期待したい。
脱原発系候補の「一本化」ができなかったことを残念に思う人はたくさんいると思う。けれど、どちらか一人の候補にしたら二人の獲得した票を単純に足した得票数になったとは限らない。他へ流れる票が必ず出ただろう。「一本化」は、所詮、無理だったのではないかと私は思っている。広く脱原発の方向は同じでも、他の政策は真っ向から違うものもあるし、脱原発にしても、やろうとしていることの力点の置き方は違っていた。共闘が絶対に不可能と言うわけではないけれど、それをするには、長い時間と労力をかけて話し合い、交渉する必要があっただろうし、互いに後ろについている勢力のことも考えると、妥協点を見出せなかった可能性が高いと思う。「一本化」の夢を見た者たちの思いをよそに、候補者同士はそのことをよく分かっていたのではないか。願わくは、脱原発派の分裂が後にしこりを残さないことを。と言っても、難しいかもしれないけれど。
「一本化」騒動を目にして、私は、フランスのように二回投票制であったら問題は起こらないのにと思った。一回目の投票で50%以上獲得した候補がいなかった場合、上位2名で決選投票をするのだ。第一回投票から決戦投票までの1週間ないし2週間の間に、3位以下の候補は自分に投票してくれた有権者に対して、決戦投票での投票行動の指示を出す。もちろん有権者は指示の通りに投票する義務はないのだけれど、従う数も多いので、第一回投票で獲得した票数は、3位以下の候補が決戦投票に残ったライバルに対して影響力を及ぼす力になる。そこで政策や、あるいは当選後のポストなどの交渉が行われるわけだ。この方式は、第一回投票で自分の推す候補が落ちてしまった場合、有権者が次善の選択をすることを可能にするので、死票の数が少なくなる利点はある。
まあ、今回の都知事選の場合は、決戦投票があったとして、全細川票が宇都宮候補に流れるとは思えないし、また仮にそうなったとして、さらに家入票その他を集めて対抗しても、枡添単独票に田母神61万票が合流すると考えると太刀打ちできないだろう。誰が入れているのか分からない枡添氏の組織票も手ごわいけれど、積極的支持を集めて獲得されている田母神氏の61万票も、私には、不気味な脅威である。
私自身にとっても、自分のスタンスを考えるきっかけになった選挙だった。私は選挙戦を通じて、宇都宮候補への支持を固め、それは私にとって経験といえるようなことだったのだけれど、それは私的なことなので、また別に上手に書けたら書いてみることにする。