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2013年2月24日日曜日

中学進学の悩み

 この土曜日、来年、中学になる息子を連れて、パリ16区にある、リセ・ラ・フォンテーヌという学校の願書交付兼説明会に行って来ました。

 リセ・ラ・フォンテーヌはパリで唯一、正課で日本語が勉強できる公立校なのですが、ここに、外国語として日本語を勉強するクラスと平行して、日本語がすでにできる子どもを対象に、日本の国語と社会の教科書を使って日本語で週6時間授業をしてくれるというシステムがあるのです。

 こうした、いくつかの学科を、その言語「で」勉強させるという方法は「パーシャル・イマージョン」といって、バイリンガル教育ではとても効果があるといわれています。ここに子どもを入れておけば、日本語教育に関しては、もうママは手を離すことができる。というわけで、問題は、越境になるので手続きがめんどくさいことと、入るのに試験があるということなのですが、「あきらちゃん、ちょっとやってみない?」…

 息子の返事はNON. いやだ、あんな遠い学校。受かったらお引越しするわよ。やだ、引越したくない。小学校の友だちみんなといっしょに、一番近所の中学に行くんだ!!! あきらの行く学校なのに、なんであきらが自分で選んじゃいけないの? みっちゃん(姉)は行かなくてよくて、あきらはお勉強できるから行かなきゃいけないって不公平じゃんか。

 う~む。こんな抵抗に出会うとは。

 私自身、この学校のことはずっと前から知っていたのですが、お姉ちゃんも行かなかったことだし、遠いし、とすっかりやる気をなくしていたため、息子にしてみればちょっと寝耳に水。とりあえず、説明会に連れて行って学校をみせたらやる気になるかも、と考えた。

 ラ・フォンテーヌ校の講堂は超満員。日本語セクションのみならず、中国語とベトナム語のセクション、音楽やスポーツを専門的にやりたい子どものためのセクションもあるためです。フランスの音楽教育のシステムは日本と違っていて、「音大付属中」のようなものはないのですが、その代わりに、洲レベルの音楽学校(コンセルヴァトワール)や有名な合唱団に所属する子どもは、十分に練習時間が取れるよう、他の学業の時間割に配慮した中学に通うのです。スポーツもそうらしく、ラ・フォンテーヌはテニスと水泳のリーグと提携があるのだそうです。

 ラ・フォンテーヌ校は中学と高校があるので、校長と中学の教頭、二人の先生が説明し、質問もたっぷり出て、各セクションに分かれての説明会に向かう途中、息子が言いました。
「ラ・フォンテーヌに来るには、成績が良くなきゃいけなくて、小学校や教育委員会やラ・フォンテーヌにいろいろお願いして、手紙を書いて、試験を受けて、それでも入れるかどうか分からない、って話だったね」
 どうせつまらないからと『ナルニア国物語』を持ってきて読んでいたはずの息子、どうやら説明を聞いていたようです。

 うん、まあね、あきら。ママもあの方針にはちょっと賛成しかねるわよ。音楽や水泳やるのにも成績が良くなきゃいけないというのはねえ。どうしてフランスの学校の先生はそういう考え方をするんだろう。他人より余計にいろいろやるからには、勉強は簡単にクリアできる能力のある子でなければいけない、という。分かんないわね。

 などと言いながら日本語セクションの教室に向かってびっくり。狭い教室は私たちが入ったときに既に立ち見状態でしたが、まだまだ後から後から人が入ってくる。私の前にいたフランス人男性が、流暢な日本語で「スシ詰め、ですね」。まったく。

 どこかで会ったことのある日本人ママさんたちも複数見えましたが、圧倒的にいたのはフランス人の親御さんたち。うちの息子を入れようと考えているバイリンガル教育のセクションではなく、外国語として日本語を勉強するセクションが目当ての人たちがこんなにいるとは、私は知りませんでした。

 ここでもまた日本語の先生が、「日本語の勉強はたいへんですから、よく考えて志望するか決めてください。」と強調します。フランスの小学校の成績は4段階評価で、細かい項目ごとに習得済み、習得中、強化必要、未修得、と評価されるのですが、このうち最後の2項目にあたる3と4が成績表に含まれていたら、「まず排除されます」とのこと。

 まあ、4は滅多なことがないとつかないのですが、3はひょっとするとついちゃうこともある。成績の良い子は一般に1と2しかないだろうとは思うので、後は2がどれだけ少ないかという競争になるのでしょう。息子を行かせようかと思うバイリンガルのセクションは、日本語(とフランス語)のテストで判定されるのですが、外国語としての日本語を選ぶ子どもたちは試験がないので、小学校の成績だけで合否が決まるらしく、そうなるとこんなに沢山希望者がいたのでは、ずいぶんよくできる子しか入れないのではなかろうか、と他人事ながら心配になりました。格別頭の良い子でないと日本語ができるようにならないというものではあるまいに。なんだか日本語だの音楽だのスポーツだのが、成績の悪い子を振り落とす口実に使われているような、本末転倒な感じがしてきます。

 フランスの学校は中学はもちろん高校でも入試というものがありません。その分、日本よりのんびりしていていいな、と思う面はあるのですが、入試で勝負、でなく常に常に学校の成績がついてまわる、こういうシステムもどうなのかな、と思ってしまいます。先生によってはとても理不尽な点の付け方をする人もありますしね。

 さてさて本題に戻って、息子ですが、高度な日本語力を身につけるには、ラ・フォンテーヌに行ってくれるのが一番いいんだけどな、と思いつつ、学校に行かなくてもそのレベルになってくれないかしら、とか、いやそれはやっぱり駄目だろう、とか、ママの気持ちは揺れています。まあ、揺れるもなにも、試験に受かるかわからないのだから、受けて結果任せでいいじゃないか、と理性は言うのですが。

2012年10月4日木曜日

「バイリンガル狂想曲」




今更ですが、2007年にポプラ社のウェブマガジン『ポプラビーチ』に連載したエッセイ、「バイリンガル狂想曲」へのリンクを貼りました。

興味を持つ読者が限られるという理由で本にはならなかったものですが、限られた読者には面白いのではないかと思うので、よかったら覘いてみてください。


第一回 余はいかにして超教育ママとなりしか
第二回 パパはポリグロット
第三回 日本語補習校顛末記
第四回 ネイティブにフランス語を教える
第五回 バイリンガルの進学先事情
第六回 みつの日本の小学校体験
第七回 歴史・地理と社会科
第八回 語学後進国フランス
第九回 4人に1人がバイリンガル
第十回 2008年正月

このブログのページ左のリンクからも行かれます。リンクページは第三回ですが、ページ下方のBacknumberから、お好きなページに飛べます。

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5年も経った今となると、子どもたちはここに書いた日本語補習校からは別の学校に移り、娘は日本語を正課でやるラ・フォンテーヌという学校には進まず、超教育ママはいろんなところで躓いていますが、この続きを書きたいといつも思っています。