2015年9月24日木曜日

「日本と中国、アフリカにおける影響力競争」9月2日ル・モンドの記事の翻訳

安保法制が議会を通過して、最初の自衛隊の初任務が南スーダンのPKOで中国の後方援助であることを知って、「仮想敵国だったのはウソか」と混乱している投稿がSNSで沢山見られました。私は安保法制賛成ではないですが、「南スーダンで自衛隊の活動領域が広がることと、中国脅威論は矛盾しない」と思うので、9月2日『ル・モンド』に掲載された、「日本と中国、アフリカにおける影響力競争」という記事を部分訳しました。筆者はSébastien Le Belzic, 2007年より北京在住ジャーナリストです。
元記事はこちら http://abonnes.lemonde.fr/afrique/article/2015/09/02/japon-et-chine-la-course-a-l-influence-en-afrique_4743339_3212.html
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(前振りとして中国の抗日戦争勝利70年式典に関連して日中両国の関係に言及した後)

アジアの両大国の歴史的なライバル関係は、アフリカ大陸でも見られる。「サハラ砂漠以南のアフリカは、両国が、世界に自国の実力を認めさせるため戦術的に重要な場所なのである」と、「Africa in the Age of Globalisation」の著者、ラミン・ディアロ教授は言う。このセネガルの大学教授はその著書の一章丸々をアフリカにおける日中のライバル関係に充てている。

アフリカにおける日中ライバル関係という、この外交上の新領域はまず、両国の原料獲得への欲望の結果である。中国がアフリカの石油、同、亜鉛、プラチナを強欲に狙っていることは知られているが、日本が自国で消費する石油のほぼ100%、自然ガスの90%、石炭の80%を輸入に頼らなければならないことはそれほど知られていない。日本が輸入しなければならないもののリストにはウラニウム、銅、鉄、木材、それに綿まで加わる。アフリカは日本の死活に関わるのだ。

とはいえ、両国のアフリカ政策は非常に違う。中国が直接投資とインフラ提供においてチャンピオンであることは間違いないが、日本はODAにおいてトップなのだ。「アジア諸国が昨年、道路復旧、導水、下水ネットワークの敷設のために投資した42億ドルのうち、35億ドルは日本から来ている」と今年発表されたリンクレーターズ法律事務所のレポートは明示している。

「日本は、アフリカのプロジェクトに最も活発に出資している国と位置づけられる。この領域では、日本の投資は中国の3倍である。中国はよく、アフリカ大陸における最も活発なアジア投資家だと考えられているが、それは間違いだ」と、リンクレーターズのアフリカ部長、アンドリュー・ジョーンズは言う。「アフリカにおいて、日本は目立たず地味にアプローチしている。一方、中国の投資はメディアで大きなセンセーションを巻き起こす」。

この日中ライバル関係は、外交、経済上に留まらない。軍事上にも認められる。日本は2011年以来、ジブチに軍事基地を擁している。これは自衛隊が海外に持っている唯一の基地だ。日本の兵士が150名は、初めはアメリカのレモニエ基地の施設に寝泊まりしていたが、その後、ジブチ国際空港から200メートルのところにある12ヘクタールの基地に配置された。そこはライバル中国の将来の基地からも200メートルである。

けだるい夏のまっさかり、英国軍とともに行っているソマリア沖アデン湾海賊対処行動の演習の一環として、初めてKawasaki P-1が数機、ジブチに着陸した。日本は、飛行場と、P3哨戒機の格納庫と指令・連絡センターを備えたこの巨大な基地を作るためにジブチに4000万ユーロ投資した。今まで日本はジブチではめだたなかったが、安倍晋三のナショナリストな政府は、この基地を日本軍の海外への前哨に変えようと欲している。

軍事競争のフィールドは他にもある。国連の旗のもとに400人の日本兵を送った南スーダンである。中国も、この同じ国連平和維持の任務に700人の兵を派遣している。日本は実際、三つの主な目的をもって、少しずつ平和憲法を放棄している。その目的とは、国連の安全保障常任理事国となること、とりわけ中国の影響力が大きくなるのをコントロールすること、そして「シルクロード構想」の道を遮ることだ。

昨年、40人のアフリカ国家元首がアフリカ開発会議(Ticad)に出席するため東京に赴いた。3年おきに開催され、次回開催が南アフリカで数ヶ月後に行われる予定の中国・アフリカ協力フォーラムの影を薄くさせると考えられる。日本はこの機会にアフリカに対し、3年にわたって80億ドルを超える援助とさらに新興国におけるインフラ建設に1000億ドルを出すと発表した。日本政府はそのアフリカ政策を三つの主な地方に軸を据えて展開させようとしている。ケニアとそのモンバサ港、モザンビークとナカラの港湾ゾーン、そしてコートジボワールの周りの西アフリカである。第六回Ticad2016年に初めてアフリカで、貧困との闘いに焦点をあてて行われる予定である。

日本にとって、それはまた中国アフリカ関係に挑戦の言葉を吐く機会でもある。「日本はアフリカの指導者たちにすばらしい事務所や美しい家を提供することはできません」と、アフリカから来た代表者たちに、外務省のスポークスマンはユーモアを交えて「そのかわりに、我々はアフリカとアフリカのヒューマンキャピタルに援助をするのです」と言った。しかし、この言葉に騙される者はいない。日本のやり方は、まず自国企業の利益に奉仕し、列島に完璧に欠けている原料の輸入を確保することだ。そしてこの闘いにおいて、少なくとも、日本と中国は五分五分なのである。

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日本が資源をまるで100%アフリカに頼っているかのようにも読まれかねない不正確な文章のある記事ではあり、また、よく読むと一つ一つのことは、知っていることかもしれませんが、こういう風に整理されると、なんで日本が軍事的に南スーダンで活躍したいかが分るような気がしませんか? PKOでも、中国ばかりに手柄を立てられたのでは日本の影響力がなくなってしまうので、一枚でも二枚でも噛んでおきたいということではないでしょうか。

2015年9月18日金曜日

「日本、人々は平和を欲する」(「リベラシオン」9月18日の記事の翻訳)

「日本、人々は平和を欲する」(「リベラシオン」9月18日)というArnaud Vaulerinによる記事を翻訳しました。細部は別として、この考察は正しく日本の現実を捉えていると思いました。

http://www.liberation.fr/monde/2015/09/17/japon-la-rue-veut-la-paix_1384766


 彼らは安倍晋三に「ありがとう」とは言わないだろう。しかしながら、安保法制に反対して抗議活動に参加する何万人もの日本人は、首相に感謝をささげるべきかもしれない。政権の座に返り咲いた2012年末以来、そして国家平和主義を葬ろうとやっきになって憲法を変えようとし始めて以来ますます、首相は意図せずして市民社会を目覚めさせてしまった。木曜の夜、国会が海外の紛争への派兵を可能にする防衛法案を討議しているとき、数万人がまた雨の中、争乱も起こさず起動隊に向き合っていた。週末には、およそ3万人が大阪でデモ行進した。他にもデモや集会が京都、横浜、札幌などで行われた。

 8月の終わりには、12万人が国会議事堂前に結集した。東京でこれほど人が抗議活動に参加するのは、騒乱の6070年代以来なかったことだ。そして9月は、市民的政治参加および政治活動において前例のない月になるだろう。

 つまり日本では、何ごとかが起こったのだ。それを大きな目覚め、政治学者吉田徹の言葉を借りるなら「街頭の民主主義」と呼ぶことにしよう。吉田は、多くの日本人と同じように「新しい抗議行動の広がりとオーラに非常に驚いた」。安保法制の議論は、参院では木曜、議員の殴り合いとなったが、政治家社会の外でこそ、この数週間、最も活発に行われていた。

集団的自衛権
「日本人はデモをすることを覚えました。台北や香港やニュー・ヨークで起きたことを見て、どこか場所を占拠することは普通で可能なことだと理解したのです」と吉田徹は続ける。「ソーシャル・ネットワーク上で、デモをサポートしたり好意的だったりする発言を見聞きして驚きました。数年前だったら、こういう運動には人はもっと懐疑的だったりシニカルな反応をしたりしたと思います」。

もちろん、1億2500万の人口に較べれば、この「街頭の民主主義」は大きいとはいえない。けれども、それは意味のある少数派であり、生きた、多様な人を代表している。国会でブルドーザー的多数派を誇る安倍晋三の自民党と連立の公明党を前にして、この闘いが不均衡であることは知っている。採決の結果と日本を「普通の国」にする夢を実現しようという首相の決意に関して何の幻想も持っていない。

 その目的を遂げ、60年来の自民党の悲願を実現するため、ナショナリストの安倍は10の法律を修正し、海外への日本の軍事力の展開を容易にしようとしている。「集団的自衛」の原則を法律上有効と認めて、日本は、列島を直接には脅かしていない戦争当事者を攻撃するという危険をともなってでも、同盟国の援助に行くことを望んでいる。

 2014年7月、首相がこの改革の根拠となるものに手をつけたとき、異議申し立てをするのが当たり前の文化として存在しないこの国で、市民社会が反発をした。異議申し立ては社会の多くの層から噴き出し、日本の民主主義は生命力を失っていないこと、「戦争放棄を定めた憲法9条への愛着は非常に強いこと」(吉田徹)を示してみせた。

権威的な怒り
 その頂点はなんといってもSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の学生たちだろう。春に結成されたこの組織は、街頭やSNSを占拠して即興のコンサートや市民行動のハプニングや白熱した討論を企画する。おとなしい消費者であり素直な労働者であるように経済に求められている若者だが、彼らはソフトな抗議を主張する。政治が提供するものがもっぱら古くさいものと退屈なもの、保守保身的なものといどく情けないもののあいだを揺れ動いている中に、彼らは効果的なラップとスローガンを持って乗り込んで来た。SEALDsのリーダーたちの出現は、埃をかぶった自民党を嘲弄するかのようだった。

 奥田愛基はそのなかの一人だ。リベラシオン紙が昨年、彼のポートレートを撮るために会ったとき、この政治学の学生は、東京の南東部のオシャレな地域で楽しい街宣に2000人の若者を集めたと喜んでいた。現在の知名度から考えるとまるで別の時代の話のようだ。黒っぽいスーツに白いYシャツ姿で、奥田愛基は、火曜日、参議院の中央公聴会で意見陳述をした。野党に招かれた彼は、「あなたがただけが、現在の状況に責任がある。法案はおそらく可決されるだろうが、多数であるからといって自分たちの思い通りにするのが正しいことなのか、与党の方々に自分に尋ねてみてほしい」(スピーチ書き起こしを参照したが、この通りには言っていない。訳者)と国会議員を叱った。

 学生の抗議行動は、作家たちや、法学者、弁護士の運動とも合流した。弁護士のなかには、横浜弁護士会の太田啓子が母親たちに訴えているような「憲法カフェ」を開く者もある。戦争に反対する女たちの会(安保法案に反対するママの会のことか? 訳者)もまた街頭に立ち、続いて数百人の演劇人が「安倍政権の専制的行為」に反対する隊列に加わった。7月にデモをした京都の主婦たちや、春に東京で出会った年金生活者たちのような一般市民のグループが「戦争法案」(今年流行の言葉)への反対を結集させた。「この抗議は政党の外で生まれた多くの運動から成り立っていて、憲法の名のもとに共に行動することにしました。60年代左翼活動かのものとはまったく関係のない新しい活動です」と、上智大学の政治学教授中野晃一は言う。

 中野晃一は、大学教授の運動(訳注 安全保障関連法案に反対する学者の会のことか)の中心人物のひとりだ、2014年4月以来、「政府は基礎的な法的原則を尊重しなければならない」と呼びかけ、「安倍晋三の安保法制の法的な正当性を問い」続けている。6月4日、学者の運動は国会の憲法審査会で勝ち星を上げた。三人の権威ある法学者が、そのうちの長谷部恭男は政府自民党に推薦されたにも関わらず、そろって集団的自衛権を「憲法違反」と宣言したのだ。「この日、日本人はこのきっぱりした見方にびっくりしたのです」と吉田徹は指摘する。

 政府は批判されるままになり、さらなる国会討議でも次々に譲って行った。しかし安倍とその側近は、異議申し立てする者に権威的に怒ったり、法案について空疎な説明をするばかりで、決して説得に成功しなかった。日本をとりまく地域に脅威が高まったために、このような改革が必要なのだとさんざん繰り返した後で、首相は、月曜日、「国民の理解と支持は法律成立後に時間とともに広がっていく」と言うにいたった。討議のコンセプトとしてはかなり奇妙である。

信用を失った政治のプロ
 日本の保守を代表する男、日本という企業の営業代理人と見られている安倍晋三だが、原発再稼働、自由を侵害する秘密保護法を推進したことで、抗議に具体的な形を与えることになった。「彼の政治スタイル、彼の社会問題に対する閉じた姿勢、反知性主義と仲間内での悪ふざけは問題になっている」と吉田徹は言う。安倍はまた、日本の有権者が政治家たちに向ける不信感を免れることはできない。2009年の政権交替の失敗がますます深めた政治家への不信感。この感情は、2011年3月の津波と原発事故のためにさらに強くなった。あのとき、日本人は、日本が国民を守ってくれるというたしかな国だという考えが福島で終わりを告げたと理解したのだ。「この新しい異議申し立ての運動が現れたのは2011年3月の後です」と中野晃一は回顧する。今安倍が硬い顔をして目の前にしているのは、そういう人々だ。同じように厳しく、彼の祖父、岸信介は年配の活動家たちに向き合った。そして凄まじい逆風のなかで日米安全保障条約の締結をした後、首相の座を降りなければならなくなったのだった。


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訳文のこなれ、イマイチですが、ゆっくりやっていると遅くなってしまうので、だいたいの文意ということでお許しください。



2015年9月15日火曜日

強行採決をしないでください

 明日(すでに今日? 16日)には安保法制の参議院特別委員会での強行採決が行われそうということなので、私も鴻池特別委員会委員長に、採決を見送っていただきたいという「要望」を送りました。
 送りたい方はこちら。
◆鴻池祥肇・特別委員会委員長(自民党・兵庫) 
(FAX)03-3502-7009 (TEL)03-6550-1001
(地元FAX)078-334-6688 (TEL)078-334-6611
(ご意見フォーム) https://s360.jp/form/31244-1010/

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 鴻池特別委員会委員長におかれましては、平和安全法制の委員会採決をなさいませんよう、お願い申し上げます。
 鴻池委員長のお名前は歴史に残るでしょう。採決すれば、日本の法治主義と民主主義に死刑宣告した不名誉な政治家として。採決しなければ、法治国家、民主国家としての日本を救った名誉ある政治家として。
 この法案が憲法に違反しており、国会は憲法違反の法律を作ってはいけないということは、鴻池委員長はご存知でしょう。防衛上の必要があるとしても、憲法を踏みにじってよい理由にはなりません。
 この法案は廃案にして、憲法の許容範囲内で新しい法律を考えるか、あるいは憲法を改正して仕切り直すべきであると、首相に進言する勇気を持ってください。
 第二次世界大戦末期に、破壊せよというヒトラーの命令に従わずパリを破滅から救ったドイツ司令官、フォン・コルティッツ将軍のことを思い出してください。

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 実は送ったのはもう数時間前で、送信フォームからコピーするのを忘れたので、記憶でもう一回書きました。だから細部がちょっと違っているかも。
 でも、もっとよくなるようにという書き直しはしていませんから、あまりオリジナルと変らないと思います。

 憲法学者の大多数と元内閣法制局長官と元最高裁判事と75人の元裁判官が揃って「違憲」と言っているのに、無理矢理採決しようとする政権、国会前のデモを警戒して西安の兵馬俑のように並んだ警察官、外から見てると、ほんとうにちょっとおかしいですよ。

2015年9月13日日曜日

国会前へ






SEALD'sのFacebookから。拡散に協力させていただきます。私は海外にいて行かれないので残念ですが。

【拡散希望】#14日決戦
明日です。民主主義を取り戻しましょう。
Facebook、LINE、mixiでも。親しい知り合いにはメッセでも送って教えてあげて下さい。1人で行かずにもう1人と行けば、国会前の光景は2倍になります。よろしくお願いします。

*EMERGENCY!!!!!
【日時】9月14日(月)
18:30〜21:30
【場所】国会議事堂前北庭エリア

安保法制の強行採決が、今週にかけて行われようとしています。私たちは、この国の自由と民主主義、そして平和主義を蔑ろにするこの法案を決して許しません。

これまでにない大規模行動となることが予測されます。水分補給と安全を第一に、国会議事堂へ私たちの声を響かせてやりましょう。CAUSE OUR DEMOCRACY. UNITE.