2014年9月7日日曜日

新学期の顔ぶれ

また新学期がやって来ました。
さぼりまくったブログも再開の時。
母親業をしていると、バカンス中ほど忙しいものはなく、
子どもたちが学校に(そして夫が仕事に)行ってくれると、はじめて息がつけるのです。
と言い訳はそこまでにして、本題に。

 今年は学校の初日を待たずして、息子には次々に友だちの転校のニュースが舞い込みました。
ジャン君は私立のサン・ピエール=サン・ジャンに。ラファエル君は引っ越して、同じ公立とはいえ学区の違うパストゥールへ。ルイ君は寄宿舎のある学校に。

仲良しが三人も一挙にいなくなると知った息子の目には涙が。

この子は、友だちと一緒にいたくて、私の勧めた、日本語の勉強できるラ・フォンテーヌ校に絶対に行かないと頑張った子なので、なんとも不憫。
うちの子たちの通う公立中学アンドレ・モーロワは、このあたりでは一番、評判の悪い公立校です。とはいっても、荒れている地域ではないので、学習に障碍が起こるようなことはないのですが、
公立校というのは、先生が休んでしまった場合に、代わりがなかなか来ないという問題があって、これはたしかに困ります。

というのは、公立校は先生の不在が2週間以上でないと、代わりを探せないという決まりがあるのだそうで、最初から2週間と分かっていればいいけれど、そうでないとダラダラいつまでも代わりが決まらないのです。
そんなわけで、去年も1ヶ月も先生が不在で、なかなかフランス語の授業が始まらなかったりということがあり、頭に来たジャン君のお母さんは、子どもを私立に移したようです。

ルイ君が寄宿学校に行ってしまったのは驚きでした。寄宿舎というのは、成績が悪かったり、素行が悪かったりする子どもの救済所というような感じで機能している面がありますが、息子の友だちのルイ君はそんなことはなかった模様。なにか家庭の事情があるようです。また、寄宿学校には、自分から行きたいと言い出す子どももいますが、彼は行きたくなかったのに可哀相だと息子が言っていました。
ラファエル君の行った公立校は、同じヌイイの中でも公立としては一番のエリート校。越境してでも行かせたがる親御さんもあるくらいですから、ラファエル君はせっかく引っ越したのだし、この機会に転校してしまった、というわけです。

そんなわけで可哀相な息子でしたが、新学期初日には満面に笑みをたたえて帰ってきました。
― マテオと同じクラス。先生もいい。

案の定、かなりの生徒が流出したらしくクラス数がひとつ減りました。名簿には名前のあるアドリアン君も欠席。学年トップで表彰されたアドリアン君、近所の名門私立校に転校したようです。
クラス数が減った分、一クラスの人数は増えて、親友の一人マテオ君が入って来た。女の子の数も増えたそう。去年は、クラスに女の子が5人しかおらず、特別、彼の関心を惹く子がいなかったので、ちょっと期待を込めて、
― かわいい女の子いた?
と訊くと、
― いない。でも、ぜんぜん、かまわない。

女の子といえば、去年のクラスの成績優秀者3人がそのまま残ったので、今年も彼の女性関係は成績争いになるらしい。マテオ君が
― おれも競争に加われるかもね。
と、男性軍の援護に入り、やれやれ、今年もあまり浮いた話のない一年になりそうです。

 

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お姉ちゃんの方は、どんなクラスに入れられるかが心配でした。
去年は、うるさくて子どもっぽくてお馬鹿さんの多いクラスに入れられて、一年中、ご不満だった娘。それもこれもドイツ語やラテン語やヨーロッパ・クラスや科学クラスのような選択授業をひとつも取らなかったためだと考えた娘は、とくべつ勉強したいわけでもないギリシャ語を選択希望して、なんとか不運から逃れようとしていました。

というのは、フランスの中学は、メインの教科のほかに、随意の選択授業があって、やりたい子どもは色々なものが学べ、やりたくない子は基礎教科だけにすることができるのです。そんなわけで、我が家でも、余力のある息子は第六学級(中学の1年目)からドイツ語をやり、第五学級(2年目)でラテン語を入れ、来年の第四学級では、週1で英語で歴史かなにかの授業をするヨーロッパ・クラスを選択させるつもりなのですが、勉強が苦手だった娘には、日本語を外でやっていることだし、過剰な負担はさせない方針で、選択授業を取っていなかったのです。
そうすると、時間割の調整から不可避的に、選択授業を取る子どもが固まってしまうので、とらない子も固められてしまう。すると、勉強のできる子、できない子でクラスを分けたような形になってしまうのは、少々、仕方のないことなわけです。

ところが娘は、自分はさておき、どういうわけか友だちといえばドイツ語、ラテン語選択者、ヨーロピアン・クラス、科学クラスの子ばっかり。でも、いまさらラテン語クラスには入れないので、ギリシャ語をどうしてもやる、と言う。
ところが、フランス語と馴染みが深く、アルファベットを使うラテン語ならともかく、文字から学ばなくてはならないギリシャ語を、中学最終学年で始めようという生徒は数少なく、ギリシャ語クラスは成立しないという噂が流れ・・・

― 悪い予感がする。
と、お姉ちゃんが帰ってくる前、弟が言いました。

そのとき、ドアが開いて
― シャルルとジュリエットと同じクラス! ジュリアもリザもいる! 夢みたい!
絵の上手い子、みんな同じクラス。競争になるかも。

と、大喜びで帰って来ました。(どの子もこの子も、競争って、意外に楽しいのかな?)

ともかくこれで一安心です。

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お姉ちゃんの方は余談があります。中学最終学年では、うちの学校には転校生がむしろたくさん入って来るようです。ストラスブールから引っ越してきた子というのもいますが、近所の公立名門校パストゥールから何人も来るのです。

フランスの学校は高校も基本的に学区制なので、モーロワの卒業生は三分の二が高校からパストゥールに行きます。だから、今年モーロワに来ても、来年はパストゥールに戻るのに、なんで来るのか???
そこでピンと来ました。
パストゥールが中学のランク付けを良くするため?

このランク付けは、中学卒業時の中卒免状試験の成績で決まります。中卒免状は、だいたい誰でももらえるのですが、それでも90%合格か、85%合格か、というようなところで差がつけられます。また、合格者のなかに、どれだけ「mentionつき」、つまり高得点合格者の割合が多いかも中学の評価につながるようです。Mentionは、12点から14点未満がassez bien14点以上16点未満が bien16点以上が tres bienで、これも半数以上の生徒がもらえるのですが、学校によって、90%から60%と開きが出るわけです。
うちの子たちの学校は65%から70%くらいですが、パストゥールは80%台。

だいたい、考えてみれば住んでいる場所によって中学校が決められるのに、同じ町の中でそんなに大きな差が出るわけがないのです。成績のいまいちふるわない生徒を最終学年でモーロワに出してしまうことによって、パストゥールのパーセンテージが維持されている…
のかなあ、と思いました。