2015年6月12日金曜日

中卒試験の「歴史」

 6月に入り、ムスメの中学卒業免状試験がもう3週間先に迫ってきました。模擬試験の成績が予想以上に悪く、今更ながらに試験勉強の手伝いをする日々。試験問題を見てみると、いろいろ発見があります。なにより、歴史・地理・公民の内容にはビックリです。

 近・現代が手薄になる日本の学校とはまるで反対のように、20世紀のことをとても詳しく勉強するのです。第一次大戦、ロシア革命、全体主義国家、第三帝国、占領とヴィシー政権、ヴィシー政権下のユダヤ人政策、レジスタンス、冷戦、ド・ゴール将軍の独立政策、アルジェリア独立、移民政策、ベルリンの壁崩壊・・・これ、教科書ではなくて、みんな過去に出題された問題ですよ。最近、ローマ教皇の発言で注目された、トルコのアルメニア人虐殺のこともやります。

 というのは、フランスの中学の指導要領では、中学1年目(第6学級、年齢的には日本の小学校6年生)で古代オリエント、ギリシャ・ローマ、ユダヤ・キリスト教世界の始まりと発展、およびインド、中国、2年目(第5学級)でイスラム世界の始まり、西洋11から15世紀およびアフリカ、3年目(第4学級)で18世紀から19世紀と取り上げる時代が決められていて、最終学年の第3学級は一年かけて20世紀を勉強する。試験範囲がどうもこの最終学年に限られているようなのです。
 
 私が中学生だったのは遥か昔のことなので、自分が受けた試験がどんなものだったかはっきり覚えているわけではないのですが、それでも出題の仕方がずいぶん違うような感じがします。穴埋め問題、択一問題はありません。
 たとえば、



 こんな絵に「第三帝国、Gerd Arntz, 1936年」とだけ説明がついたものが出題されて、

 設問1、この絵で作者が表そうとした政治体制は何かを答え、その理由を二つ上げて説明しなさい。(3点)

 設問2、この資料を紹介し、作者が第三帝国についてどんなことを示したかったかを説明しなさい。(3点)

 期待される答えは、たとえば
1「この絵で作者が表そうとした政治体制は、1933年にアドルフ・ヒトラーによって敷かれたナチスの全体主義体制である。ピラミッドの頂点にある腕を伸ばした姿は総統ヒトラーである。彼の右横(絵では左)にはナチスのシンボルマークである鉤十字の旗が立っている。大砲や砲弾、軍人が多く描かれているのは、政府の軍国主義を表している。有刺鉄線はこの国家による恐怖政治を思わせる。」

2「この資料は1936年、この体制が安定した政権になった時に描かれた絵である。作者は、ヒトラーが「第三帝国」と名付けた体制の組織と目的を表現しようとした。頂点にはヒトラーが位置し、彼の主な支持者である軍、政治警察、大企業の社長らがそれを取り巻いている。大砲と砲弾は、第一次大戦後に無理強いされた条約を破棄し、領土(生活圏)を広げようとする軍事計画を表している。「生活圏」とは、東ヨーロッパ全体を指し、ナチス・ドイツにとって、ドイツ民族の存続と発展を約束するものとされていた。有刺鉄線と斧と血のついた首切り台は、ドイツ人に課せられた恐怖政治と強制収容所をほのめかしている。」


 公民では、フランス第五共和国憲法がよく出題されます。驚いたのは、2012年の大統領選挙のときの、決選投票の候補者、オランド対サルコジのテレビ討論の写真が出題されて、「民主主義におけるメディアの役割」について書かされたりすることで、これも面白いので、明日にでもまた紹介しますね。

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