2017年2月12日日曜日

兵役適齢者調査

 先週の金曜日は、ヴェルサイユに行きました。17歳のムスメがrecensement(兵役適齢者調査)で防衛省に呼ばれたので送って行ったのです。「兵役適齢者調査」って、ちょっとビックリしますが、現代版の徴兵検査です。

 兵役適齢者調査は、この日の最後に交付される証明書を、バカロレア(高校卒業=大学入学資格試験)を受ける際や運転免許証交付の際に提示しなければならないので、実質、持っていないと困ります。また「二重国籍の人は受けておいた方が良い」と言われたと娘は言っていました。

 フランスは2001年、シラク大統領のときに、現代、先進国の戦争では、特殊技術を持たない大量の戦闘用兵士は必要がないという理由で兵役義務を廃止しました。なので、1979年生まれ以降の世代は、兵役を経験していません。けれども17歳から25歳の間に、この「兵役適齢者調査」に出かけて行き、登録だけはしてくることになっています。だから、国防に関わっているのは高度の訓練を受けた職業軍人だけですが、もしも必要になった場合は徴兵される可能性がゼロとはいえません…

 とぼんやり知ってはいたものの、徴兵制のない国で育った私は、これがどんなものか見当もつかず、せいぜい1、2時間で終わる面接のようなものと思っていました。ところが、なんと一日がかりのセミナーのようなものなのだそうです。
「兵役適齢者調査に行くと、学校休めるんだって、ワーイ! いっしょに行こう!」と友だちにだまされて、蓋を明けてみたら一人、しかも休暇中の一日に当たってしまったムスメがちょっと可哀想だったので、私は送って行って、この機会にヴェルサイユに最近居を定めた友人宅で久しぶりのおしゃべりに興じながら彼女の出てくるのを待つことにしました。

 雪のちらつく寒い日、防衛省から出て来たムスメの話によると、来ていたのは150人くらい。顔見知りは同じ高校から来た一名だけだったけれど、同じ町の他の高校からも何人か来ていて、馴染み易かったようです。
 ウケ狙いのムスメは、「軍人の格好してみたい人?」というのに立候補して、ヘルメットやら防弾チョッキやらリュックやら機関銃やら全部で50キロ以上、自分の体重より重いものを身に付けてみたそうです。なんせうちのムスメは身長150センチの小柄な身体ですから、軍人さんもリュックから手を離す前に「だいじょうぶ?」。「はい」と言ったものの、やっぱりよろけたりして、教室みんなを笑わせて来てお得意でした。

「ん〜、フランスは素晴らしい国、フランスのために奉仕しよう、って宣伝だったな〜。交通安全の講義はなんの役に立つのか分からなかったな〜。それから、フランスには空軍、陸軍、海軍があります、って説明があって。バカロレアの後の進路案内の学校紹介と似てたけど、あんまり行きたいって人いなかったな〜。うちのグループでは一人、ここ刈り上げちゃった(とこめかみを指し)男の子が入りたいって言ってたけど、もう前から軍隊入ってますみたいな子だったよ。あと、みんなで軍に志願した人がお話しするビデオを見た。おれ〜、バック・プロ(職業高校卒業免状)取れなくて〜、仕事なくて〜、けど、軍に志願して〜、新しい道を見つけました〜、みたいなこと言うんだ。けど、あんまり入りたくならないよね。非軍事的役務っていうのもあるんだって勧められたけど、月500ユーロくらいしかもらえないんだって。最低賃金より低いんだよ。やんない。
  
 2015年のパリのテロ事件以来、フランスでは兵役再義務化の議論が起こっており、国民の7割は賛成とか。今春の大統領選で社会党のマニフェストには、これが含まれるはず。保守党候補のフィヨンは、「大量の若者を軍隊が訓練のために受け入れるのは、現実的に難しい」と言っており、極右候補のルペンも兵役再義務化には言及していないと思いますが… (日本人にはちょっと意外な構図かもしれませんね)

 今年18歳の娘と15歳の息子。徴兵制復活の可能性から遠くはないところにいるのだと、改めて思いました。

0 件のコメント:

コメントを投稿