2017年9月11日月曜日

山尾しおりさんのスキャンダルと離党について


 昨日、ひとつ仕事が終わって時間ができたので、山尾しおりさんが不倫疑惑で民主党を離党した件について書きます。

 まず、山尾しおりさんは、不倫をしていないと私は思っています。そのことを以下に論理的に検証します。

 まず第一に、山尾しおりさんの資質です。彼女は不倫を悪だと思う倫理観の持ち主です。自民党のゲス議員の不倫を強く糾弾したという過去がそれを物語っています。
 私などは、恋愛は自由だと思っていますから、頭ごなしに「不倫は悪だ」と思いませんし、他人の不倫を責めたりはしません。他人の不倫を責めるような人が自ら無防備にダブル不倫なんか、するでしょうか? 
 するとしたら、人生変わるような灼熱の大恋愛ということになります。しかし、まあ、そういう雰囲気はありません…
 どなただったか名前をメモしておきませんでしたが、民進党の同期の男性議員の方が、「同期で一番、やらなさそうな人だ」とコメントしていましたが、この方のおっしゃることが正しいのではないでしょうか。

 第二に、時期の問題です。民進党は代表選があり、執行部が変わって、彼女はこれから幹事長になる予定でした。そういう仕事上最も大事な時期に、不倫相手と週4回、密会をするでしょうか? そんな大事な時期に恋に狂っていたのでしょうか? あまり辻褄が合いません。
 私は山尾しおりさんは、倉持麟太郎弁護士と、本人たちが言っている通り、仕事上の打ち合わせをしていたのだろうと思います。これから幹事長になる、民進党をどう導いていくか、どういう政策を打ち出すか、具体的にスピーチ原稿をどうするか、相談していたのではないですか? だからこそ、よりによってこの時期に週に4回も会っていたのでしょう。そう考えた方が分かり易いと思います。

 第三に、「脇が甘い」とみなさんがおっしゃっているように、不倫スキャンダルがあまりに簡単にすっぱ抜かれたことです。恋愛でなかったからこそ、そこまで無防備に会っていたのではないですか? 
 幹事長になろうという大事な時期に、不倫スキャンダルなど起こったら大変なことくらい、山尾さんが分からないはずはありません。だから、不倫だったらちゃんと隠したことでしょう。疾しいところがなかったからこそ、警戒を怠ったのではないでしょうか。
 疾しいところがないというだけで警戒を怠ったこと、傍目にどう見えるかを考えなかったことは、たしかに不覚でしたが、不倫とあまりに縁がない性格だったが故の不覚だったたと考えると納得がいきます。そのことはご本人が今、死ぬほど悔しがっていらっしゃるだろうと推察します。


 もちろん、お二人が仲が良かったのは事実と思います。それに「遠くて近きは男女の仲」と言いますから、元々はその気でなくても、男女が二人きりで長時間いっしょにいる間に、ひょっこり、なにか起こってしまうことまでは否定できません。
 でも、たとえそうだとしても、彼らが会っていた主な目的が仕事であることは変わりません。百歩譲って何ごとかあったとしても、それは出来心で、家族にきちんと謝罪すれば済むような問題だと思います。仕事を抛り出して逢引していたというのとは全く違うのだから、民進党や世間様に対しては負うべきなんの責任もありません。

 それにもかかわらず山尾しおりさんは離党しました。その理由は、民進党に愛想を尽かしたからだと私は思います。幹事長になって、ぱっとしない民進党の立て直しのために持てる力を尽くして頑張ろうと思っていた矢先、「お前の不始末で選挙が闘えない、迷惑だ、辞めてくれ」という声が、聞きたくなくても耳に入るくらい鳴り響いて、幹事長を打診して来た新代表も守ってくれないという状況になったら、「ああ、そうですか。ご迷惑おかけしましたね」と悪態ついて党を去り、決着したくなったのでしょう。私だってそうしたと思います。

 そういうわけで、いきさつは面白いものではありませんでしたが、私は、山尾さんは民進党を離れて良かったと(政治素人の見解かもしれませんが)思っています。
 民進党はあまりにも負の遺産を背負った沈む船だと思うからです。代表選でも明らかになったように方針もまとまらない人々の寄せ集めですし、優秀な若い女性議員に嫉妬して、脚を引っ張るような人たちの集まりだということも今回のことで分かりました。山尾さんの力を持ってしても立て直すのは容易ではないでしょう。
 山尾しおりさんは、民進党の看板を背負っていなくても、自分の名前でやっていけるだけの実力のある政治家だと思います。泥船の民進党は離れて、ご自分の名前の旗の下に、政見を同じくする人々を集めて動いたほうが自由に動けるし、実際、うまくやれば、小池百合子のなんとかファーストをも吹き飛ばすくらいの風を吹かせることができるでしょう。時代の風は、既存政党ではなく、既存の政治を破る新しい勢力の方に吹いています。そういう方向で、山尾しおりさんには頑張っていただきたいです。

 山尾さんの力を日本の政治を変えるために使っていただいてこそ、倉持麟太郎弁護士と共にやってきたことも生きてくるのだと思います。不倫が真実であったかどうかは、山尾さんの今後の仕事が明らかにしてくれるでしょう(幹事長就任という時期に恋愛を優先していたとすれば、そのような人は、幹事長になろうがなるまいが、今後、たいした仕事はしないでしょうから)。そして、国民のために一生懸命働いて、政治家として良い仕事をしてくれるのであれば、一夜、あるいは四夜、夫と子どもを置いて外泊しても、一国民としては、ありがたくこそあれ、非難するようなことではない。国会議員として、権力を不当に使ったり、私腹を肥やしたりせず、国民のためになる仕事をしていただけるのであれば、それ以外のことは、何を食べようが、何を着ようが、どこに泊まろうが、誰と寝ようが、私ども国民としては、まったく関知しない、関知する権利もないということを申し上げたいと思います。

 どうぞ今回のことは、人間万事塞翁が馬、禍転じて福と成していただきたいと私は期待しています(山尾しおりさんがどこかでこれを読んでくださると良いと願っています)。
 

2017年6月14日水曜日

委員会採決抜きに唖然

私は本当にあきれています。
参議院で与党が、共謀罪を新設する組織犯罪処罰法改正法案を成立させるために、委員会採決を省略して中間報告の後、本会議で採決という暴挙に出たと知ったからです。

そんな最低限の手続きすら経ないで成立した法が有効になるんでしょうか?

共謀罪の審議は、可決できるような状態ではありません。審議すればするほど、法案はぼろが出ているので、議論を踏まえてまともに採決したら否決されるのが当然。なのに可決するのは、与党議員が数に任せて、議論を無視して賛成票を投じるからですが、だからといって、議論もまともに行わず、踏むべき手続きも踏まずに採決とは!

論理的に考えれば、そんなことをやるのは、いろいろ後ろめたいからですよね。
自信のある立派な法案だったら、会期延長して説得し、反対の人にも納得してもらってから採決したらいいじゃないですか。
加計問題や森友問題、レイプ事件問題などでも、後ろ暗いところがないのなら、会期延長して証人喚問をやり、正々堂々、疑惑を払ったらいいじゃないですか。
それを議論もちゃんとしない、証人喚問もしないで国会を早く終わりにしてしまいたいというのは、きちんと検証したらまずいことばかりだからということでしょう。


こんな内閣、与党を支持するのは、もうやめにしませんか?

2017年6月12日月曜日

共謀罪に反対します

 私は共謀罪に反対です。

 自分のブログに書くという基本的なことをやっていなかったので、急いでこれを書いています。13日本日、参議院で「共謀罪」(「テロ等準備罪」と言い換えていますが実質は、過去3回も廃案になった「共謀罪」と同じもの)を新設する組織犯罪処罰法の改正法案が委員会採決されるかもしれないという情報を見たからです。

 ご存知と思いますが、もしかして知らない方のために簡単に紹介すると、この組織犯罪処罰法は、「組織的犯罪集団」が犯行を計画し、メンバーの一人が準備行為に及んだ段階で、それ以外のメンバーも処罰できるようにするという趣旨のものです。

 この法案には大きな問題があって、それは、まだ犯罪が行われていない段階で、犯罪を計画したというだけで処罰の対象にされることです。そうなると、普通の行為と犯罪との境界が非常に曖昧になります。
 また「組織的犯罪集団」についても明確に限定されていないので、「一般人は対象外」ということが成り立ちません。

 つまり、誰が何を「犯罪行為」や「組織的犯罪集団」とするのか、とても曖昧なので、拡大解釈されて、言論の自由や人権が損なわれる大きな危険があります(と言うより、取り締まりたい人を取り締まるのにとても好都合な法律を作ろうとしているとしか考えられないくらいです)。

 このような重大な危険性のある法案であるため、「共謀罪」は過去3回も廃案になってきました。
 しかし、そういう「共謀罪」を「テロ等準備罪」と言い換えて、政府はまた持ち出してきました。「これは善良な市民には関係のない「テロ」対策だ」と言って、2020年の東京オリンピックを無事に開催するためにはこの法律が必要、また国連の「越境組織犯罪防止条約」に加入するためにはこの法律が必要だと訴えたのです。

 しかし、越境組織犯罪防止条約(パレルモ条約)のためというのは噓で、この条約は、物質的経済的な目的がある組織犯罪集団、例えばマフィアや暴力団対策のための条約で、宗教的、イデオロギー的な目的に基づく犯罪行為を除外していますし、テロを対象としたものではありません。
 テロ対策自体に関していえば、国連が作っているテロ対策に関する10余りの条約について日本は全てを批准しています。国連が推奨している国内法におけるテロ対策の法整備は既に済ませていて、爆弾の製造、核物質の拡散、ハイジャックなどについては、予備罪、共謀罪を処罰する法律が既にあります。

 「共謀罪」の創設は、テロ対策よりも、政府に都合の悪い言論や活動を取り締まるためにこそ有効であるように思われます(共謀罪が成立したらこれを使う立場になる警視庁の組織犯罪対策部長が、詩織さん事件で山口容疑者逮捕に待ったをかけた中村格氏(当時警察庁刑事部長)、古賀茂明氏が報道ステーションでI am not ABEを訴えたときにクレームをつけてきた中村格氏(当時菅官房長官の秘書官)であることを考えると、どういう風に使われるか想像できてしまいませんか?)。「共謀罪」は、平成の治安維持法とも言われます。政府に都合の悪い団体を弾圧するために拡大解釈して使われた治安維持法の再来を許さないために、絶対に成立させてはいけない法律なのです。
 

 国連の人権理事会でプライバシーの権利を担当するケナタッチ特別報告者が、「個人のプライバシーを守るための措置が盛り込まれていない」と懸念を安倍首相宛書簡で表明しています。政府は、この書簡に誠実に答える形で、法案を練り直すこと、現在国会に提出されている法案は廃案にすることを、国会議員の方々にはお願いしたいと思います。

2017年6月3日土曜日

詩織さんを支持します

 私は、レイプされた事件について529日に顔を実名を出して会見を開いた勇気ある女性詩織さんを全面的に支持します。
 彼女が訴えているのは、元TBS記者でジャーナリストの山口敬之氏を準強姦罪で告訴したけれど、不起訴処分となり、これを不服として検察審査会に審査を申し立てたという内容です。

 ネットでは話題になっているので、これを見る方はすでにご存知かもしれませんが、TVや主要新聞はなぜか一斉に沈黙したそうなので、一応、説明をしておきます(性犯罪を厳罰化する刑法改正案が審議入したのに伴い、民進党がこの件で質問するとかで、主要メディアも触れないわけにはいかなくなったようですが)。

 まず、詩織さんはアメリカでジャーナリズムと写真を勉強したフリーのジャーナリスト兼写真家で、事件が起こったときは、アメリカで知り合った山口氏に就職の相談をしていました。ところが、泥酔して前後不覚に陥り、気がついたときには裸で山口氏のホテルのベッドにいて氏が上に乗っていた、といいます(この事実自体は山口氏も否定していない)。
 この事件は高輪署が調べて、山口氏に逮捕状も発行されたのですが、成田空港で逮捕する直前に、警視庁の「上から」の指示により逮捕ができなくなりました。
 そして捜査本部も移されて新たに捜査し直された挙げ句、嫌疑不十分で不起訴となったということです。この逮捕状にストップをかけたのは「週刊新潮」によると、当時警視庁刑事部長だった中村格氏。みずから「私がやった」と認めているそうです。
 しかし、このような「上から」の介入による逮捕状の不執行や、また警察が詩織さんに示談を勧めて弁護士のところに連れて行ったなど、異例のことづくめです。
 山口氏が安倍総理にたいへん近いジャーナリストであったことから、圧力があったのではないかという疑いがあります。中村警視庁刑事部長は、この職に就く以前は、内閣官房長官秘書官を務めており、元経産省官僚の古賀茂明氏が報道ステーションでI am not ABEを訴えた際に、番組中に電話をして来たという人物でもあります(この後、古賀氏が官邸の圧力で番組を降ろされたことはご承知と思います)。

 ここには問題が二つあって、ひとつはレイプの問題であり、もうひとつは権力の介入の問題です。
 山口氏は性関係は認めた上で「合意だった」と主張したい模様ですが、酔って前後不覚になった女性が、覚醒したときに「嫌だ」と言って逃げたという状況から考えると、「合意だった」は無理ではないでしょうか。百歩譲って意識のなかったときに女性が合意したとしても、そういうのは合意になりません。
 逮捕状も出ていたのに、それを取りやめさせるのであれば、それ相当の理由が必要です。中村氏はそれを説明しなければなりませんね。

 もう一つは、権力の介入の問題です。
 総理大臣の親しい友人だと犯罪を犯してももみ消してもらえるとしたら、恐ろしい権力の濫用です。総理大臣の親しい友人だと、規制緩和をして学校を作らせてもらい、数々の補助金など厚遇されるという加計学園問題とも併せて、現政権が権力を私物化していないかどうか、はっきり検証してもらいたいです。

 詩織さんは、大きな勇気をもって、二つの告発をしています。

 まず、レイプについて。レイプ事件は、レイプされた被害者の方が責められることが多くて、レイプされただけで傷ついているのに、公表するとさらに傷つけられる、被害者の立つ瀬がない事件です。詩織さんは、こういうことが続くことがないよう、性犯罪被害者に不利に働く現在の法的・社会的状況を変えようとしています。

 次に、国家権力によるもみ消し疑惑。途方もない力に対して、個人のかよわい身で告発をしています。
 このような疑惑は解明され、権力が私物化されないという状況にならない限り、私たちもいつ詩織さんと同じ目に遭うか分かりません。女であり、また権力につながる人の犯罪の被害者になったら、という理由で。詩織さんは、私たちを代表して、私たちのために闘っているのです。

 あらぬ誹謗中傷に遭っている詩織さんですが、私は感謝し、支持しています。そのことを言うためにブログを書きました。

2017年4月23日日曜日

投票デビューは大統領選 2

今朝、娘の生涯初の投票について行きました。
「パパのする通りするんだぞ」と、なんでもないことを教えたがる父親。「最初のテーブルに11枚、候補者の名前が印刷された投票用紙が置いてある。そこで投票カードと身分証明書を見せて、投票用紙を何枚か取る。全部取らなくてもいいんだよ。それからカーテンのついてる記入所に入って…」「試着室みたいなとこね」と娘。「そう、そこで一枚だけ、選んだ候補者の名前の紙を封筒に入れて、出て来たら投票箱の前の列に並ぶ。自分の番が来たら、また投票カードと身分証明書を見せて、そうすると投票者名簿と向こうで照合するから、そしたら封筒を投票箱に入れて、名簿にサインして投票終り!」
投票できない外国人の私がカメラマンの役を引き受け、投票する娘を写真に撮っていたためか、「今日が初投票か!」と娘は選挙管理人さんたちに大受け。「シャンパンはいらない? じゃ、クロワッサンはどう?」とお祝いされ、選挙管理委員長が出て来て「おめでとう。今日が初めてで、これからもずっと君は民主主義に参加する。民主主義が続くように」とお祝いの言葉とビズーをいただきました。
ちょっと感動。選挙管理委員長のおじさんが、「民主主義のために」と祝福してくれるなんて、たぶん日本じゃ起こらないことだろう…
すごく当たり前に、投票と民主主義と自分とがつながっているのが感じられます。
成人式なんかより、初投票を祝ったらいいんじゃないかなと思いました。

さて、フランスの投票方法に関心のある方は、私のフランスの友人たちが調べた詳しいレポートをご覧ください。投票所の写真が掲載されているので、どんな様子か分かりますよ(「試着室」とか)。

フランスの選挙投票と開票のシステム

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夜、

第一回投票の結果は、ご存知のとおり、1位マクロン、2位ルペンで2週間後に決選投票になりました。
ミツはがっかりして、8時のニュースを見るなり部屋に引っ込んでしまい、夫はずっとテレビの選挙番組を見ていましたが、マクロンが出てくる前にいなくなりました。
私は一人でマクロンの演説を聞いていましたが、ふわふわと耳当たりの良いことを並べるだけで、何分話していたかわからないけど、実に中味のない演説だと思いました。話し方もぎこちない、というかどこか微妙に変。取り柄は若くてハンサムなこと… 「新しい」のは上辺だけで、オランドさんの後継者。私に選挙権があったら、それでも決選投票はマクロンに入れるでしょう。そういう人が沢山いるから、今回はルペンが負けるでしょうが、その後、またルペンのFNが勢いを増すのではないかという気がしました。

いろいろ考えるべきことはあるのだけど、「自分の頭で考える」というのは、言うほど簡単なことではないので、馬力のない頭を働かせる元気がありません。今日はもう寝ることにします。おやすみなさい。


2017年4月22日土曜日

18歳、投票デビューは大統領選




 大統領選が二日後に迫った金曜日、ようやく娘のミツのところに投票カードが届きました。

 ミツはこの三月に18歳になったばかり。この大統領選が投票デビューです。必ず投票しようと去年から投票カードの申請に市役所に行っては「来年おいで」と追い返され、それでは来年と正月二日に出かけて行って登録を済ませ、なのにいつまでたっても投票カードが送られて来ない!
「こんなことでは、ミツがマリーヌ・ルペン(移民排斥、EU離脱を掲げる極右、国民戦線の女党首)に投票できないじゃないか!(これは、フランス人がよく使うアイロニーで、真意は「マリーヌ・ルペンを阻止する投票ができない」という意味です、念のため)」と悪態をついて、市役所に催促に行き「もうすぐ届く」と言われて待つこと数週間。やっと手にした投票カードです。

 さて、ミツが誰に投票するかは、クラスの注目するところとなりました。ミツのクラスはまだ18歳になっていない子も多く、なっている子の中でも選挙人登録に行ったのはミツ一人だったのです。
「フィヨンでしょ。フィヨンだ〜!」
 ちなみにうちの近所は伝統的に保守が強い地盤なので、周りを見回してもフィヨンに投票するという人が多い。なので「フィヨンでしょ」という予想は分からないでもありません。ミツは何も言わず、ニンマリ。そのためフィヨンとの噂が。
 しかし授業で大統領選が話題になったときにメランションの政策を良く知っていたことを目ざとく捉えた級友が、
「メランションだ。あたしたちを代表してメランションに投票してよ!」
 ミツの行っている高校は、ヌイイ市というブルジョワの町にありながら、隣のピュトー市の一部も学区に入っているので、シテ(郊外の団地)からも生徒が来る、珍しく社会的混合性のある学校。また第一学級(高2)になりコースが分かれたら、ミツの行った文系は、理系、社会・経済系と異なるタイプの生徒が集まっていて左翼的傾向が強い。今回のフランス大統領選で、アメリカにおけるサンダースの位置にあるメランション支持の生徒も当然いたということなのでしょう。

 さて当のミツは、最初は「マリーヌ・ルペンを阻止する」以外に、誰に投票したらよいか皆目見当がつかず困っていたのですが、いろいろ見聞きし、自分なりに投票先を決めたようです。話を聞くと、架空雇用スキャンダルで信用を失墜したフィヨン候補は論外。マクロン候補はなかなか政策を明らかにせず、イメージばかり先行の候補なのでNG。左翼統一候補予備選で好感を持ち、エコロジーや教育を重視する立場で社会党のアモン候補を選びました。

 ところがアモン候補は、選挙戦が進むに連れて支持が下降線をたどり、上位4候補に大きく水を開けられてしまいます。現政権(社会党)の不人気に足を引っ張られたばかりか、同じ社会党で予備選を争った右派のヴァルス(現首相)たちがアモンをほっぽり出して中道、独立で立候補したマクロンにつくという裏切りに会い、支持が急落。これを受け、テレビ討論で有権者の心をつかんだメランションに左翼支持者の票もかなり流れてしまったようです。

 このままアモンに投票するか、「コミュニストは嫌いだけど」メランションに入れるか、悩んでいました。「決選投票に左翼が残る道はこれしかない」。メランションが「コミュニスト」というのは、ネガキャン(私はコミュニストにネガティブなイメージを持っていませんが、一般的にはやっぱりネガキャンなのではないかと)を鵜呑みにしている感がありますが、18歳にして「戦略的投票」というのを考えるところは、やっぱりフランスの選挙文化は違うのかな、と思いました。一方、まだ選挙権のない15歳の弟は自分だったら「戦略的投票」ではなく自分の支持する候補に入れると持論を展開して、これもまたフランスの選挙文化は成熟しているなと思いました。なんせ自分が最初に選挙に行った頃なんて、今思うと、自分の投票がどういう意味を持つかなんて、あまり頭を使わず投票していましたからね。

 さあ、いよいよ明日が投票日。世論調査では、マクロン、ルペン、フィヨン、メランションの順番でマクロンが優勢となっていますが、FacebookTwitterの分析を元に、Brexitやアメリカ大統領選の結果、保守予備選でのフィヨンの勝利、左翼予備選でのアモンの勝利など、世論調査よりも早く予想したというFilterisは、ルペンは落ち目でフィヨンの方が上昇する勢いがある、マクロンは他の三候補よりもSNS上の動きを見るとダイナミックでない、すなわちスコアが低いと独自の結果を発表していました。
 しかし、木曜日、このタイミングで起こったシャンゼリゼのテロ事件は、明らかにルペン候補の有利に働いたようで、その後、Filterisはフィヨンとルペンの順位を入れ替えています。
 ルペンが決選投票に進むのをフィヨンが阻むなら良いですが、決選投票がルペン対フィヨンになるのは私としてはちょっと避けてもらいたいな…
 トランプ大統領を生んでしまったアメリカからは、「我々の轍を踏むな、メランションに投票せよ」というメッセージが続々届いていて、なにか心を動かされます。


 四半世紀住んでいても投票権のない外国人の私は、フランスでは政治的に赤ちゃん同然。そもそも赤ちゃんだったミツが初投票に出向くのを、感慨を持って送り出すことになるでしょう。


ミツの描いたモード画